なんとなく

長いことご無沙汰しております。もう更新やめようかと思ったこともありましたが、たまたまここで書きたいことができてしまったので、更新します。
さて本題。ここで四次元主義+時間対応者理論、つまりSiderの立場から矛盾が出ることを指摘した論文があるのを知った*1。でも、id:smotさんの解説を読む限りでは、この議論はあきらかに間違い(たぶんStoneは対応者理論を理解してない)。以下、箇条書きで。

  1. 細かいことだが、「時点tにおいて時空ワームAはユニコーンの像Uと同一である」なんて言い方がそもそもおかしい。時空ワームの個別化は時空領域によっておこなわれる(だって「時空」ワームだから)ので、わざわざ「時点tにおいて」を付ける意味はない。段階(stage)も時間的幅が無いワームと考えていいので、こういう言い方をする余地はない(「Aの時点tにおける段階はUの時点tにおける段階と同一である」または「Aのt0からt1における時間的部分はUのt0からt1における時間的部分と同一である」ならOK)。
  2. ユニコーンの像と同一であるワームAと、ユニコーンの像が溶かされてそのあとにマーメイドの像が作られたときの両者を形作っているブロンス塊と同一であるワームBは、当然同一ではない。AはBの一部(つまり時間的部分)に過ぎない。だから、BはAより多くの時間的部分をもつというのはその通りだが、だからといって何も問題はないのは明らか。
  3. Aのtにおける段階とBのtにおける段階は同一、つまり同じ一つの段階Sなのに、Aの段階とみなされるときとBの段階とみなされるときで時間的部分が違ってくるのはおかしい、と考えてるのかもしれないが、対応者理論はまさにそういう理論。Sの〈ユニコーンの像対応者〉である段階の集合と〈ブロンズの塊対応者〉である段階の集合は、前者が後者の部分集合になる。
  4. したがって、もし四次元主義+時間対応者理論から矛盾がでるならば、それは〈段階をどうみなそうとも、それの対応者である段階の集合は一意に定まる〉ということを前提しているからだろう。でも、そもそも対応者理論のいいところは対応者関係が一定じゃないところ(どんな対応者関係を用いるかに応じて対応者の集合は異なる)。だから、対応者理論を採用し、さらにこの前提を受け入れる理由はどこにもない(もちろん、そんな人はどこにもいない)。

というかね、正直、こんな論文のせてるようじゃAnalysisもいかんですよ。査読者なにやってんのと言いたい。

ここでふと、これぐらいのことは既に誰かが指摘してるんじゃないかという気がしたので、ちょっと検索してみた。すると、もっと簡潔にこの論文の問題点を指摘したものが見つかった。

Antony Eagle, (2007), 'Reply to Stone on Counterpart Theory and Four-Dimensionalism,' Analysis, 67, 159-162.

簡潔かつ的確にStone論文の問題点を指摘していて、素晴らしいです。おすすめ。

*1:Analysisなんだから知っておけよというお叱り受けそうな気もするけど。