今日のJason Stanleyゼミ

また日付が変わってしまったけど、久しぶりのJasonゼミ。ここ二回、ゲストスピーカーが来てたので(前々回はHeck、前回はProops)、久しぶりにJasonの講義。今日はOn Denotingについて。
RussellがPrinciples of MathematicsでのDenoting Concept理論からOn Denotingの理論に至った決定的な理由はそれほど明らかではない。ただ、量化理論の(再)発見だけが理由ではない。もしそうだとすれば、On Denotingの大部分が確定記述の話に充てられている理由が謎になる。むしろ"No Meaning of Isolation" Doctrineを重視すべき。記述の理論はこのdoctrineに依存している。これによってdenoting Phraseがdenoteする対象を措定せずにnon-existentを説明することが可能になったので、denoting conceptの不思議な振る舞いを説明することから開放された(想像するに、Russellはdenoting conceptが厄介だということに気付いたんで、無理にその枠組みを守る必要はないと考えたんだろう)。

ところが、実際には記述の理論にはひとつ問題がある。マイノンクやブレンターノが抽象的対象を措定したのは、志向的な他動詞にはその目的語によって指示される対象が必要だと考えたからだが、記述の理論で志向的な他動詞を含む文を分析するのは難しい。これは、志向的な他動詞の典型例が命題的態度であることを考えれば明らか。donoting conceptを認めている限り、この問題は生じなかった。

この後、On DenotingのRussellの立場のスタンダードな説明があったけど、スタンダードすぎて忘れた。他には、去年の夏、Kripkeが「RussellはOn DenotingでFregeを批判をやっているが誰もそれに注目しない」とか言ったらしいが、Jasonに言わせれば、それはPresupposition Projectionの問題で、言語哲学の授業でちゃんと教えられている、とのこと。